1.紹介状なし1000〜2000円増 大病院受診負担 政府、22年度にも
12月17日 毎日新聞 |
紹介状なしに大病院を受診した患者に5000円以上の負担を求める制度について、政府は負担額を1000〜2000円程度増やす検討をしている。大病院への患者集中を緩和する一方、公的医療保険からの給付を減らして社会保障費の削減を狙う。年明けに社会保障審議会で議論し、2022年度からの実施を視野に入れる。
他の病院や診療所の紹介状なしで400床以上の病院で受診した患者は現在、1〜3割の通常の窓口負担に加えて、初診で5000円以上、再診で2500円以上の特別料金の支払いを求められている。特別料金は全て病院の収入になる。
政府は既に20年度から、対象病院を400床以上から200床以上に広げる方針を決めている。さらに特別料金を1000〜2000円増額する一方、初診料・再診料などの診療報酬を減額することで、医療保険財政の負担を減らす検討をしている。一方、政府の全世代型社会保障検討会議で提案された、全ての外来受診に一律数百円程度を上乗せする「ワンコイン負担」については、結論を先送りする。
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2.診療報酬改定 医療技術料0.55%上げ 薬価1%超下げ
12月14日 毎日新聞 |
政府は13日、2020年度の診療報酬の改定で、医師の技術料にあたる「本体部分」を実質0.55%引き上げる方針を固めた。このうち、長時間労働是正など医師の働き方改革に必要な財源として0.08%分を確保。薬や医療材料の公定価格「薬価」の引き下げと合わせると、全体の改定率はマイナスとなる見込み。麻生太郎財務相と加藤勝信厚生労働相が協議し、大筋で合意した。
診療報酬は2年に1度、見直される。医師の人件費などに充てられる「本体部分」と「薬価」からなる。政府は20年度予算編成で、高齢化の伸びに伴う社会保障費の自然増を抑制するために薬価を国費で1000億円超引き下げたほか、介護の制度改正などで財源が捻出できる見込みが立ち、本体部分の財源に回すことでまとまった。
日本医師会は「医療従事者の人件費を手当てする必要がある」と本体部分の引き上げを求めていた。本体改定率は、前回改定(0.55%)と同じ水準。薬価は、マイナス1%超で調整している。診療報酬とは別に、医師の働き方改革に向けた基金に新たに百数十億円を上積みする方向で調整している。
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3.75歳以上医療費、2割負担対象は半数以下に 政府方針
12月12日 朝日新聞 デジタル |
政府は、全世代型社会保障検討会議が今月中旬に取りまとめる中間報告で、いま「原則1割」となっている75歳以上の医療費の窓口負担割合を、負担能力がある人に限って2割とする方針を示す。2割負担の対象となる人は、全体の半数を大きく下回るように調整し、負担増の影響を一定程度にとどめる方向だ。
財務省や健康保険組合は「原則2割」に引き上げ、新たに75歳になる人から順次2割負担とするよう主張していたが、与党などの反発を受けて見送る。今でも現役並み所得(単身世帯で年収383万円以上)がある人は3割負担で、全体の約7%。2割を新設して、1割、2割、3割の3区分とする。負担能力がある人が多く負担する「応能負担」の考え方に基づいた具体的な制度設計は、検討会議の来年夏の最終報告に向けて、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)で検討するが、政府関係者は「2割負担と3割負担の人が全体の半数以上となるような線引きにはしない」と話す。
財務省などは、大半が2割負担となるように、中間報告に原則2割への引き上げを書き込むべきだと主張していた。一定の所得がある人に限って2割負担とするよりも、医療費を抑える効果が大きいからだ。だが、自民党の10日の会合では、応能負担を推し進めることで一致する一方、原則2割への引き上げは国民の理解を得られないといった批判が相次いだ。公明党も来週取りまとめる社会保障改革の提言で、「原則1割を基本とする」と明記する方針だ。
政府はすでに労働・年金・介護分野の改革案をまとめており、医療制度改革の方向性と合わせて、「パッケージ」として中間報告に盛り込む。
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4.受診時定額負担、政府見送りへ 与党や医師会の反発受け
12月11日 朝日新聞 デジタル |
政府は、医療費を抑えるために検討していた外来受診時の定額(ワンコイン)負担の導入を見送る調整に入った。与党や医療現場で「受診抑制につながる」といった反発が根強かったため。代わりに、紹介状なしで大病院を受診した患者に追加料金を求める制度を強化する方向だ。
定額負担の導入は、社会保障費の抑制のために財務省が強く主張し、医療制度改革の焦点の一つだった。だが、与党内では「医療費は、受けた医療サービスの対価であるべきだ。病院の入場料のような仕組みはおかしい」(ベテラン議員)といった批判のほか、医療保険財政が厳しくなれば「定額」が増えていきかねないとの懸念も根強かった。
自民党の有力な支援団体の日本医師会なども、「受診が遅れ、重症化する可能性がある。容認できない」と主張。また、「健康保険法の付則で定める、医療保険で患者の自己負担の上限は3割という原則を崩す」と譲らなかった。政府は、定額負担の導入に理解を得るのは難しいと判断した。一方、政府が決める医療サービスの価格「診療報酬」の来年度改定に向け、中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)では「紹介状なし受診」の見直しの議論が進む。いまは診療所などの紹介状なく400床以上の病院を受診した患者に、初診なら5千円以上の追加料金を義務づけているが、対象病院を200床以上に広げる内容。政府は、定額負担の導入に代わる医療費の抑制策と位置づけることも検討している。
75歳以上の医療費の窓口負担(原則1割)の引き上げについては、自民党の10日の会合で賛否が割れたものの、負担能力に応じて多く払う「応能負担」を推し進めることで一致。成分が似た市販薬がある医薬品を医療保険の対象から外すことについては、政府・与党で議論が進んでおらず、実施の方向性を打ち出すことは困難な見通しだ。
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5.オーダーメード勤務で女医が辞めない「三重モデル」
12月11日 日本経済新聞 電子版 |
不規則な勤務や事故のリスクを背景に、全国的に産婦人科医の不足が課題となっている。出産や育児で現場から離れた女性医師の早期復帰を促し、解決につなげているのが三重大学医学部付属病院(津市)だ。短時間勤務など子育てと両立しやすい環境を整え、豊富な人材を確保している。
「経過は順調です。来月も受診してくださいね」。11月中旬、津市の住宅街にある診療所「三重レデイースクリニック」で医師の田中佳世さんが患者に優しく声をかけた。クリニックは2017年に同病院の医局のひとつである産婦人科が独自に立ち上げた。医局は診療科ごとの教授を中心にした人事組織で、治療に加え、研究や医師教育も担う。クリニックでは、原則として同科に所属する約20人の女性医師が交代で診察している。
女性医師は妊娠や出産でいったん一線を離れてしまうと、子育てとの両立が難しかったり、休職中に手術技術のブランクが生じたりするなどの理由で、その後の復職が難しいとされる。復帰しても非常勤のパート勤務が中心で、医局に戻るケースは少ないという。
厚生労働省によると、全国の医療機関で産科・産婦人科に従事する医師の数は2016年時点で約1万1千人。10年前に比べて約1200人(12.6%)増えたものの、医師全体の伸び率(14.9%)を下回る。20年前とほぼ同数なうえ、両科の医師の4割を女性が占めており、医師不足の解決には復職支援が欠かせない。このため同クリニックでは、医師の家庭の都合や希望に応じて、「午前のみ」「午後のみ」「週2日だけ」など柔軟な「オーダーメード勤務」を可能にしている。
17年以降、6人の医師が出産後に医局へ復帰し、子育てを理由に辞めた人はいないという。田中さんも長女(3)を育てながら働いており、「子育てしながらだと居づらい医局もあると聞くが、ここはそういう雰囲気はない」と笑う。医局はローテーションで所属する医師を各地の関連病院に派遣し、地域医療を支えている側面もある。
三重大の産婦人科は県内の主要な関連7病院に約50人を派遣しているが、うち4割は女性だ。勤務先の病院に縛られず、各病院の繁閑に応じて医師が行き来できる独自の試みも導入するなどし、医師が心身ともに余裕を持てるようにしている。こうした取り組みが功を奏し、同科の医師数は11年からほぼ倍増し、現在約100人が所属する。「人材確保が難しい地方大学としてはかなり多く、全国でも数少ない成功例」(日本産婦人科医会)で、来年は11人が新たに加わる予定という。
同科の池田智明教授は「家庭と仕事の両立を目指す医療界の働き方改革の実現には、豊富な人材が欠かせない。一部に負担が集中しないよう配慮しつつ、多様な働き方を提供することで、復職しやすい環境を今後も整えていきたい」と話す。
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6.長野市の歯科医院 ユースエール認定 県内医療機関で初
12月4日 日本経済新聞 電子版 |
デンタルクリニックオアシスを経営する医療法人ハピネス(長野市、大熊毅理長)は、若者の採用や育成に積極的で、雇用管理の状況などが優良な中小企業を厚生労働大臣が認める「ユースエール企業」に認定された。働きやすさを重視した取り組みが評価され、このほど認定通知書が交付された。長野県内での認定企業は6社目で、医療機関では初めて。
ユースエール企業の認定制度は、若者雇用促進法に基づき2015年10月に創設された。認定されるには離職率、残業時間、有給休暇の取得率などで具体的な条件をクリアする必要がある。離職率では「直近3事業年度で就職した人の離職率が20%以下」、有給休暇では「取得率が平均20%以上」などとなっている。
デンタルクリニックオアシスは13年の開業。18年4月に医療法人を設立した。現在は正社員10人とパート社員1人のほか、産休中、育休中の社員がそれぞれ1人いる。子供が小さい社員向けに短時間勤務制度を取り入れるなど、働きやすい環境を整えた結果、開業以来、退職者ゼロを続けているという。
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