1.診療報酬、20年度マイナス改定へ検討「本体」プラス、薬価引き下げで全体マイナス
9月16日 毎日新聞 |
政府は2020年度の診療報酬改定について、社会保障費抑制の考えから、前回(18年度)、前々回(16年度)に続いて全体の改定率をマイナスにする検討に入った。過去2回同様、医師の技術料や人件費に当たる「本体」部分はプラス改定維持を目指しつつ、薬価を引き下げて全体がマイナスとなるよう調整する。政府関係者が明らかにした。
診療報酬は医療の公定価格で、原則2年に1度改定される。政府が年末の予算編成時に改定率を決めた上で、厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」が個別の報酬額を決定する。18年度は全体でマイナス1.19%、16年度は同0.84%だった。
政府は来年度予算の概算要求で、高齢化の進行などによる社会保障費の自然増を5300億円と想定している。予算編成過程で自然増を数百億円以上圧縮する必要があり、診療報酬のマイナス改定は避けられないと判断した。だが、地域の医療提供体制を維持するには医師の長時間労働を是正して働き方改革を進めねばならない。そのためにはスタッフ増員など人件費の膨張が避けられず、それをカバーするのに日本医師会など医療者側は本体部分のプラス改定を強く求める構えだ。
一方、薬価は実勢価格との差額を引き下げることが可能なため、今回もそれを財源に充てる。ただ、消費増税に伴う今年10月の診療報酬の臨時改定で、薬価は既に実勢価格を反映させ0.51%引き下げるため、20年度改定で捻出できる額は限られる。全体の改定の幅は小さくなる可能性がある。このほか、今回の改定の議論では、年間数千万円にもなる高額医薬品の薬価のあり方や、批判を浴びて凍結した「妊婦加算」に代わる報酬の導入も焦点になる。
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2.よだれ研究の渡部氏、歯で見抜く虐待のサイン
9月16日 朝日新聞 デジタル |
人々を笑わせ、考えさせる研究に贈られるイグ・ノーベル賞に、今年も日本人の受賞者が誕生した。明海大教授で小児歯科医の渡部茂さん(68)。自分の息子ら幼児たちに食べ物をかんでは出させる実験などを行い、4年がかりでまとめた。その研究の狙いは。親なら誰もが手を焼く子どもの「よだれ」。その量を初めて正確に測った親として、人を笑わせ、考えさせる研究に贈られるイグ・ノーベル賞を受けた。
息子ら5歳の幼稚園児30人に食べ物をかんでは出してもらって唾液を集め、4年がかりで1日に出る量を500ミリリットルと推定。1995年に論文を発表した。唾液は食事で酸性になる口の中を中性に戻してくれる。「血液や尿より軽くみられているが、酸から歯を守る大事な役割がある」。その研究に没頭していた。
福島県出身。子どもの虫歯を減らそうと小児歯科医の道に進み、北海道や関東の大学で診療と研究を重ねた。麻酔の注射では、子どもがまばたきをしただけで「ごめんね」と謝る。ピンクの服で明るい雰囲気を演出する。予防と治療が進み、子どもの虫歯は激減した。だが今も歯がボロボロの子と出あう。家庭で歯磨きなどの生活習慣が乱れているからだ。虐待や育児放棄を受けた子に虫歯が多いという報告もある。
4年前、明海大(千葉県)の教授として「日本子ども虐待防止歯科研究会」を設立。地域の歯科医師会や保健所を訪れ、「口の中の様子から虐待などのサインを読みとって」と訴えてきた。「自分に縁があるとは思いもしなかった」イグ・ノーベル賞。受賞後も変わらず、今の活動に力を注ぐ。
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3.健保連「医療費、75歳以上の負担2割に」引き上げ政策提言を発表
9月9日 毎日新聞 |
大企業の健康保険組合で組織する「健康保険組合連合会」(健保連)は9日、75歳以上の後期高齢者の医療費の自己負担額を今の1割から2割に引き上げる政策提言を発表した。団塊の世代(1947~49年生まれ)が後期高齢者になる2022年から医療費がさらに膨張するため、政府に改革を求める。
健保連の試算では、会社員の給料に占める医療、介護、年金の社会保険料の割合が、健保組合の平均で19年度29%から22年度30%、25年度31%へと上昇する。高齢者の医療費や介護費を支えるため、現役世代が負担する額が増えることが主な要因だ。
健保連は対策として、75歳以上の医療費自己負担額を、低所得者を除いて原則2割にすべきだと主張。75歳から79歳まで毎年1歳ずつ2割負担の範囲を引き上げた場合、患者の自己負担は年平均で700億円増え、公費負担が逆に800億円減るという。
また、花粉症薬や湿布など市販薬と同じ成分の医薬品は公的医療保険の対象外にしたり、患者の自己負担額を引き上げたりするよう提案している。佐野雅宏副会長は「国民皆保険制度を維持するためには給付と負担のバランスを取るよう進めていくしかない」と話している。
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4.オンライン診療、参入続々 LINEやJCOM、顧客基盤生かし展開
9月4日 毎日新聞 |
インターネットなどを通じて医師の診療を受けることができる「オンライン診療」に、情報技術(IT)や通信関連企業が相次いで参入している。近くに病院が少ない過疎地に加え、都市部でも在宅診療の需要が高まっていることが背景にあり、各社は自社の顧客基盤などを生かしたサービスの展開を目指している。
無料通信アプリのLINEは1月、医療関係者の専用サイトを運営する「エムスリー」と共同出資し、「LINEへルスケア」を設立。 LINEアプリを使ったオンライン診療を年内に始める。LINEの月間利用者は8000万人に上る一方で、エムスリーも27万人の医師と16万人の薬剤師を会員に抱え、分厚い顧客基盤を生かして利用拡大を狙う。
ケーブルテレビ(CATV)国内最大手のジュピターテレコム(J COM)も8月、オンライン診療事業への参入を発表。テレビの画面を通じてオンライン診療を提供するサービスは国内で初めてといい、2021年度の商用化を目指す。J COMの契約者は全国で約551万世帯。ヘルスケア事業への参入をきっかけに、医療データを活用したビジネスも展開したい意向だ。このほか、NTTドコモがオンライン診療のシステムを医療機関などに提供。1月には、和歌山県で第5世代(5G)移動通信システムを活用した実証実験を実施している。
これまでのオンライン診療は、医師がいない過疎地に住む患者に医療サービスを提供することを目的に、医療機関が中心となって徐々に広がってきた。しかし近年は都市部で、ネットによる診療時間の予約システムの導入などで病院での待ち時間を短縮する動きが拡大するなど、各社は在宅でのオンライン診療の需要の高まりを見込んでいる。
ただ、診療では患者の病歴など重要な個人情報がやり取りされるため、セキュリティーの強化などが課題となる。厚生労働省は18年に指針を作成し、情報漏えいの防止の必要性など基本的な考えを示した。同省担当者は「オンライン診療は医師不足などの課題の解決につながる。安全で適切な普及のためにルールを定期的に見直していきたい」と話している。
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5.厚労省概算要求 総額は過去最大の32兆6234億円
8月27日 厚生労働省 |
厚労省は、令和2年度歯科保健医療施策に関わる概算要求を発表した。新規では「歯科口腔保健医療情報収集・分析等推進事業」に1億91万円、「在宅歯科医療体制支援事業」に2097万円、「歯周病予防に関する実証事業」に1億6056万円、「歯科技工士の人材確保対策事業」に7581万円、ITCを活用した医科歯科連携の検証事業」に3106万円、「脳卒中患者に対する口腔機能管理モデル事業」に3005万円を要求。日本歯科医師会によると要求額は33億5700万円で、前年確定予算額の43.5%増となる。主要項目は次の通り。
1.歯科口腔保健・歯科保健医療の充実・強化 |
1,545百万円(769百万円) |
健康寿命の延伸に向けた歯科口腔保健施策を実施するため、「新しい日本のための優先課題推進枠」を活用。
健康寿命の延伸に向けた歯科口腔保健の推進
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8020運動・口腔保健推進事業 |
835,745千円(402,806千円) |
都道府県等口腔保健推進事業 |
733,956千円(301,017千円) |
地域の実情に応じた総合的な歯科保健医擦施策を進めるための体制確保、歯科疾患予防、歯科保健医療サースの提供が困難な障害者・高齢者等への対応やそれを担う人材の育成、歯科口腔関連調査研究及び医科・歯科連携の取り組みに対する安全性や効果等の普及を図る。
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歯科口腔保健医療情報収集・分析等推進事業 |
100,910千円(新 規) |
各種データや自治体等の先進的な取組等に関する情報収集を行い、それらの精査・分析等を行った上で、見える化を行うとともに、得られたデータ等を有効に活用するため、都道府県の歯科保健医療施策の企画・立案等を担う人材の育成に対する支援を行う。
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歯科保健医療体制の推進 |
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在宅歯科医療提供体制支援事業 |
20,975千円(新 規) |
高齢化の進展や病床機能の分化等による在宅医療を必要とする患者の増加に伴い、在宅歯科医療を必要とする患者も今後さらに増加すると考えられることから、各地域において、在宅歯科医療提供体制の構築や整備に中心的な役割を担う人材の育成等を行う。
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健康増進効果等に関する実証実験の実施 |
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歯周病予防に関する実証実験
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160,561千円(新 規) |
働き方改革の推進に向けた検証事業の実施 |
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ICTを活用した医科歯科連携の検証事業 |
31,064千円(新 規) |
歯科標榜のない病院や介護施設において、オンライン診療を活用した口腔機能管理等に関するモデル事業を実施し、効果的・効率的な歯科専門職の介入方法について検証する。また、地域の状況に応じたオンライン診療を実施し、適切な運用・活用方法等を検証する。
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脳卒中患者に対する口腔機能管理モデル事業 |
30,050千円(新 規) |
急性期の脳卒中患者に対して、歯科専門職が参画するチーム医療による口腔機能管理介入のモデル事業を実施する。
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1)8020運動・口腔保健推進事業 |
8億3574万5千円(4億280万6千円) |
都道府県口腔保健推進事業 |
7億3395万6千円(3億101万7千円) |
8020運動推進特別事業 |
1億46万3千円 |
歯科口腔保健支援事業 |
132万6千円 |
2)口腔保健に関する予防強化推進モデル事業 |
6583万5千円 |
3)歯科健康診査推進等事業 |
2億781万8千円 |
4)歯科医療機関による歯科口腔機能管理等研修事業 |
3420万3千円 |
5)歯科医療提供体制推進等事業 |
1507万9千円 (1513万1千円) |
6)歯科技工所業務形態改善等調査検証事業 |
1905万5千円 |
7)医療提供体制施設整備交付金 |
28億3900万円の内数 |
2.歯科医療分野の情報化の推進 |
3100万円 |
3.歯科医師臨床研修関係費 |
14億9600万円(13億4300万円) |
4.歯科医療従事者等の資質向上 |
2億500万円(1億2700万円) |
5.へき地等における歯科医療確保 |
400万円 |
6.歯科医療安全の確保・向上 |
1900万円(1300万円) |
7.その他 保険局所管歯科保健関連事業 |
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健康寿命の延伸に向けた歯科口腔保健の推進 |
7億8240万7千円(6億9504万7千円) |
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